■平安京 音の宇宙〜平安時代の京都のサウンドスケープ
10月26日(金) 19:00〜20:30
ゲスト:中川真(サウンドスケープ研究者)
ホスト:下田展久
参加費:当日1000円/予約900円(1ドリンク付き)

桓武天皇によって造営された平安京の都市計画の根底には、都の北方に玄武、東方に青龍、南方に朱雀、西方に白虎という想像上の動物を配す、四神相応の思想が横たわっていたという。もしそうだとしたら、京は同時に北は盤渉調、東は双調、南は黄鐘調、西は平調という荘重な響きに包まれていたことになる。(中川真著「平安京 音の宇宙」より)

ガムラン合奏団、マルガサリを主宰する中川真さん。実は、東南アジアの民族音楽、サウンドスケープ、サウンドアートを研究する音楽学者です。平安時代の京都の音の風景について書いた「平安京 音の宇宙」(平凡社 1992)でサントリー学芸賞、京都音楽賞、小泉文夫音楽賞を受賞しました。平安京の都市計画は、中国から入ってきた宇宙観をもとに設計されているとのこと。そしてなんと、各方位には、特定の音高(ピッチ)を持った音を、寺院の梵鐘として配していたそうです。今で言うと都市計画の段階で、大規模なサウンドスケープデザインが行われていたことになります。また、実際の平安京だけではなく、当時の文芸である『源氏物語』のなかの音も探求。ぞっとするようなスピリチュアルな音がきこえてくるかもしれません。会場では、平安京の音をシミュレーションしてみようと思います。サウンドスケープという視点(聴点)が、世界を捉えるときにどんな変化や驚きをもたらすのか、来場のみなさんと楽しみ、そして考えて行きたいと思います。…下田展久

《ゲスト》中川真(サウンドスケープ研究者)
 東南アジアの民族音楽、サウンドスケープ、サウンドアートを研究する音楽学者。
1980年代よりガムラングループを主宰し、カナダ、インドネシアへの海外公演を成功させる。著書『平安京 音の宇宙』(平凡社 1992)でサントリー学芸賞、京都音楽賞、小泉文夫音楽賞を受賞。京都国際現代音楽フォーラムのディレクターとしての活動により、京都府文化賞を受賞。他に『小さな音風景へ』(時事通信社 1997)、『音は風にのって』(平凡社 1997)、『民族音楽学概論』(インドネシア・オボール出版 2000)、『宇宙の響き』(ドイツ・メルフェ出版 2000)などの著書がある。
2001年8-9期のNHKテレビ人間講座を担当。2003年に小説『サワサワ』(求龍堂)を上梓。楽劇『桃太郎』(2005)、『イザナギとイザナミ』(2002)の監修・演出など。大阪・船場アートカフェのマスター。大阪市大大学院文学研究科教授。インドネシア国立芸術大学客員教授。1951年奈良県生まれ。


《ホスト》下田展久
'95年よりC.A.P.に参加。'02年よりCAP HOUSEディレクター兼館長。CAP HOUSE館長に就任する前に勤めていた(株)ジーベックで築きあげた仕事の密度と正確さと信頼度はすこぶる高い。音楽活動もしていて、CDを2006年にリリースした。音楽のマニアックな話しをし出すととまらず、どんどんディープになりすぎて周りにいる者を置いてけぼりにすることがよくある。つねに身体のどこかしらの具合がよくなく、一時は'病の百貨店'という異名までついたほど。

■平安京 音の宇宙〜平安時代の京都のサウンドスケープ

僕は、この本を読んでびっくりしてしました。都市全体の音環境が中世の京都でデザインされているなんて!?しかも、いろんな寺の鐘を雅楽の音律に基づいて使い調律して配置したと言うので、更にびっくり。平安京は、外国(中国)から伝わった音程で沢山の鐘が四方から一日に6回、同時に鳴り響くエキゾチックな都市だったそうですよ。そんな都市に一度住んでみたいものですね。でもそれも、日常がものすごく静かで空気の澄んでいる環境でないとありえませんね。
この日のリビングルームでは「平安京 音の宇宙」の著者、中川真さんを囲んでたっぷりと話しを聴きました。五行思想とは?時を告げる都の音とは?市井の音はどんな風に聴かれていたのか?そして、当時最先端の五行思想を基にした平安京を支えるコスモロジーを表す音とは?ということで、この本を書く時の調査で録音した平安時代に作られた11の寺院の梵鐘を実際に東西南北の位置に置いたスピーカから再生してみました。鐘の音とともに時間の流れが緩くなるような、それになんだかちょっとガムランみたいな不思議な響きでした。しかしこれはたった11の鐘の音。当時はもっとあっただろうと予想されているそうですが、実際、中世につくられて現存している鐘だけでも32体あるんです。しかしほとんど国宝だそうで、なかなかその響きを聴く機会もありません。やっぱり、想像してみるしか無いんですけど、当時の人にとってはちょっとエキゾチックな空気が、鐘の音とともに漂ったのかもしれません。昔の事っていうのは斬新なもんだ、と考えさせられたリビングルームでした。
《ホスト》下田展久