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「CAP HOUSE便り」vol.6 HIROS

今回登場していただくのは、インドの笛・バーンスリー奏者のHIROSこと、中川博志さんです。HIROSさんは、CAP HOUSEにアトリエはありませんが、声明のコンサートや、民謡とインド楽器の競演など、他では体験できない機会を提供してくれます。また、プロ顔負けの料理の腕前と、ユニークな語りが、CAP HOUSEの空気をよりいっそう和ませてくれます。

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■HIROSはいったい何者?
 私はCAP会員ですが、定期的なミーティングにはあまり出席しませんし、CAP HOUSEで日常的に活動しているわけでもありません。パーティーでカレーを作ったり、HIROSカレースパイスセットなるものをカフェで売ったりしているので、メンバーの中にはカレー関係者だと思っている人がいるかもしれません。ごくたまに、リビングルームのコンサートで演奏しているのですが、この間の七夕コンサートでは、大胆にもプロ歌手を前に秋田民謡を披露しましたので、「笛を吹いて、民謡も歌うカレー関係者」に昇格したかもしれません。また、冬の宴会では自家製キムチを必ず持参するので、キムチ関係者だと思っている人もいるかもしれません。さらに、キッチンで一日居酒屋を開いたこともあるので、居酒屋系関係者だと思っている人もいるかもしれません。

■美術系と音楽系の接点
 CAP HOUSEはアートセンターですから、ここを拠点に活動している人たちや集まってくる人たちは、アートに携わっているか、アートに関心のある人たちです。インドの竹の横笛「バーンスリー」を演奏する私も、一応アーティストの部類に入るといえますが、演奏家としてCAP HOUSEに登場するのは、年に数回だけ。従って、パーティーでのみ顔を合わせる人たちには、料理関係者だと思われても仕方がないのです。しかし、CAP HOUSEにはそう思われることが誇りとなるような、風通しの良い気持ち良さがあります。ここに出入りする多国籍老若男女はすべてイーブンで、社会的地位や収入の多寡をほとんど詮索しない寛容さがあるのが良いところ。
 本業である音楽関係で知り合うのは、自然と同業者やその周辺の人たちが多くなり、ごく親しい友人を除けば、美術関係の人たちと付き合う機会はありません。しかし、CAPとかかわり、分野の異なる人たちの活動を知ることができるようになり、私自身の想像力の選択肢が、少し幅広くなったように思います。

■震災からのつながり
 私がCAPとかかわるようになったきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災でした。当時、フランスのマルセイユ近辺のアーティストたちが、被災した神戸のアーティストへ連帯の意思表示をするために催した「アクト・コウベ」というイベントで、私は、現在CAP HOUSEの館長である下田展久氏らとともに、たまたま収益金の受け入れ先になったのです。そして、送金されてきた義援金を使ってアート・イベントを開催したのが、CAPだったというわけです。震災がきっかけで生まれたこの交流から、CAPと私の関係は、現在まで続いているのです。当時放置状態だった旧神戸移住センターの建物を、一時的に神戸市から借りるための話し合いに参加し、借りた後に行った半年間の「実験」にも参加しました。この建物がCAP HOUSEと名づけられた後の2001年には、マルセイユの「アクト・コウベ」に関わった22名の外国人アーティストたちに、1カ月間CAP HOUSEに滞在してもらい、交流活動を行ったこともありました。こうしたCAP HOUSEを核として繰り広げられるさまざまな活動は、音楽や美術の垣根を超えた創造的な「遊び」が可能であることを教えてくれました。
 もし震災がなければ、笛を吹いて民謡も歌う、カレーおよびキムチおよび居酒屋系関係者だと思われているかもしれない私と、CAP HOUSEとの関係は生まれませんでした。阪神・淡路大震災は悲惨な天災でしたが、同時に、これまでにない人とのつながりを生み出しました。私にとってCAP HOUSEは、その象徴のような存在なのです。

 


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