〈3回連続コース〉

6|Artist ゼミナール 榎忠

ベテランアーティストはその長いキャリアや作品の変遷や代表作など、俯瞰的にその制作活動を捉えることが出来る反面、1点ずつの作品に焦点を当てて作品を読み解く機会は少ないでしょう。この講座では1講座1作品を取り上げ深堀りしてゆきます。その第1弾としてアーティスト榎忠(エノチュウ)を取り上げます。昨年のARTS STUDYでは個人の活動とJAPAN KOBE ZEROの活動を取り上げましたが、1つ1つの作品にエピソードが溢れすぎて話の尺が全然足りないという実感がありました。個々の作品や活動について細かな記録を整理して保管しているエノチュウさんの資料を拝見し、実際にお話を聞きながら本人の言葉と作品を照らし合わせていろいろと聞いてみようと思います。

今回は3つの作品をARTS STUDYディレクターの山下和也がセレクトし、講座に向けて調査と打ち合わせを経て、聞き手として個々の作品についてエノチュウさんにお話をお聞きします。

6-①
「裸のハプニング」1970年 26歳

日時:2025年10月10日㈮ 19:00〜20:30
講師:榎忠(アーティスト)
会場:KOBE STUDIO Y3 (神戸市中央区山本通3-19-8 海外移住と文化の交流センター3階)

【講座内容】

体に万博のシンボルマークを焼きつけ、街頭に現れる。大阪で日本万国博覧会が開催された1970年、8月2日に日本で初めての歩行者天国が六大都市で一斉に実施された。その当日、榎は、腹部と背中に直径約15cmの万博マークの日焼けの跡をつけ、白いふんどし姿で東京・銀座の歩行者天国を歩くというハプニングを行った。しかし、当時は学生運動が盛んだったため警察の取り締まりが厳しく、10分も経たないうちに騒乱罪で逮捕された。公害問題への配慮を理由に歩行者天国ができたその一方で、万博のために買収された田んぼの真ん中に突如現れた宣伝用の万博マークを目にした榎は、企業や国が参加する大規模で得体の知れない「祭り」に対して違和感を覚えたという。人間にとって「祭り」とは何かという疑問を抱き、自然と共にあるべき「祭り」本来のあり方を自分に植えつけるため、4月から4ヵ月間、毎日30分間太陽の光を浴びて自身の体に直接、万博マークを焼きつけたのだった。銀座でのハプニングの後、一躍有名になった榎は、当時としては珍しかった缶コーヒーの雑誌広告でモデル出演を行ったこともある。それまで絵画を中心に制作をしてきた榎が、今までとは異なる「行為」という手法にまで、表現の幅を広げるきっかけとなった作品。​

6-②
「TREE, out-in-out」1975年 31歳

日時:2026年 1月23日㈮ 19:00〜20:30​
講師:榎忠(アーティスト)
会場:KOBE STUDIO Y3 (神戸市中央区山本通3-19-8 海外移住と文化の交流センター3階)

【講座内容】

アートナウ`75でJAPAN KOBE ZEROのメンバー16人が、活動の拠点である神戸の再度山に登り、松くい虫に蝕まれた25mの松を根っこから掘り出し兵庫県立近代美術館へ運ぶ。冬季の展覧会ながら全員が汗だくになり、力を総動員しての搬入となった。大木は三分割され、美術館の1階ピロティ、2階展示室、屋根上を貫通するかのように展示された。美術館が予想だにしなかった大がかりな搬入作業、美術館内に収まらない作品の見せ方、入館料を払わずとも外から、そして遠くからでも作品(の一部)が見られるやり方ーそれは、地元神戸という場所性にこだわり、16名の肉体と精神を結集した実験的な試みの軌跡。

6-③
「スペースロブスターP-81」1981年 38歳

日時:2026年 2月27日 19:00〜20:30​
講師:榎忠(アーティスト)
会場:KOBE STUDIO Y3 (神戸市中央区山本通3-19-8 海外移住と文化の交流センター3階)

【講座内容】

総重量25tの巨大機械彫刻。神戸港に造られた人工島ポートアイランドにて開催された博覧会、神戸ポートアイランド博覧会(1981.3.20~9.15)「テーマ館」で発表。作品設置後、それを囲うようにして建物が建てられたという、榎作品のなかでも最大・最重量級の作品である。本作品が制作された1980年代には、ゴミや核の廃棄物を宇宙や海中に捨てるという計画があったという。そこで榎は、地球やさまざまな星が協定して、それぞれの星から出た廃材を宇宙空間に打ち上げ、それらゴミの集積から大きなゴミの星の誕生を想像した。やがて、ゴミで形成されたその星では生命が生まれ、次から次へと打ち上げて来られるゴミに困ってしまう。そこで、元の場所へとゴミを送り返すことになるのだが、地球から捨てられたゴミはひとつの乗り物として地球へ送り返される。水陸両用で、潜水も可能、宇宙でも飛ぶことができる、夢のような乗り物。それが『スペースロブスターP-81』である。実際に使用されていた昭和初期の鉄道車両や船、電化製品などの廃材を榎忠自らの手で解体して部材を収集、制作された。

【講師紹介】

講師:榎忠(アーティスト)

1944年香川県善通寺市生まれ。60年代後半から関西を中心に活動。前衛グループ「JAPAN KOBE ZERO」での活動(1970-76年)を経た後、街中での会場探しからはじめ、自ら展覧会全体を作り上げることを行ってきた。代表作「ハンガリー国へハンガリ(半刈り)で行く」(1977年)、「Bar Rpse Chu」(1979年)など型破りなパフォーマンスや、銃や大砲などを扱った作品、金属の廃材に新しい生命を吹き込んだ作品など、独自の世界を展開。美術館やギャラリーに限ることなく、現在も神戸を拠点に活動を続けている。

近年の主な展覧会に、個展「その男、榎忠」(KPOキリンプラザ大阪/2006年)、「ギュウとチュウ―篠原有司男と榎忠―」(豊田市美術館/2007年)、個展「榎忠展美術館を野生化する」(兵庫県立美術館/2011年)、高野山開創1200年特別企画展「いのちの交響」(高野山真言宗総本山金剛峯寺/2015年)、「釜山ビエンナーレ2016」(釜山市立美術館/2016年)、「拡がる彫刻熱き男たちによるドローイング」(BBプラザ美術館/2017年)、個展「MADE IN KOBE」(ギャラリー島田/2018年)、「百代の過客」(ART BASE百島/2018年)、個展「RPM-1200」(ANOMALY/2020年)、個展「祭の日には大砲を鳴らせ!」(city gallery 2320/2021年)、個展「Pumice(パミス)」(ギャラリーノマル/2022年)など。

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