Music

実践者であり研究者である2人の音楽家による講座。

アジアの音楽

即興の音楽、作曲家もいなければ楽譜もない音楽、手拍子の打てない音楽など、アジアの色々な音楽を紹介します。

講師:HIROS(中川博志 インド音楽研究演奏、日本音楽)
/高橋怜子(C.A.P. / M1-1のみ)
聴き手:下田展久(C.A.P.)
時間:各回 19:00-21:00
会場:Urban Picnic

M1-1

10月18(金) 「私たちの音楽の基礎知識〜音楽と西洋音楽」

私たちの周りにあふれている音楽は、その大半が西洋音楽をもとにつくられています。アジアの音楽と相対化する前に西洋音楽とはどんな音楽なのか、今一度おさらいしましょう。

M1-2

11月15日(金) 「和音のない音楽~アジアの音楽地図」 

日本から中東あたりまでの音楽地図を俯瞰し、アジア各地のすばらしい音楽を紹介します。アメリカの実験作曲家の中にも、アジアの音楽をヒントにした人たちが何人もいるのです。

M1-3

12月20日(金) 「作曲家のいない音楽〜インド音楽の即興」

インド古典音楽には作曲家はいません。ではどうやって音楽は生まれて来るのでしょう?インドで使われている音楽創造のための厳格なメソッドを紹介します。

M1-4

2025年1月17日(金) 「楽譜のない音楽〜ラーガ;音楽創造のシステム」

インド音楽の演奏はラーガという音の配列に基づいて行われます。ラーガは沢山の種類があり、特徴的なフレーズと音の修飾方法、世界観、演奏すべき季節や時間なども含まれます。

M1-5

2月21日(金)「手拍子の打てない音楽~リズムのはなし」

インド音楽は、出だしの部分では自由な拍子で演奏されます。モンゴル、トルコ民謡、日本民謡も、自由拍子と一定のリズムのある拍子に分かれます。リズムについての講座です。

M1-6

3月21日(金) 「ピアノのない音楽世界〜様々なアジアの楽器と表現」

シタール、サーランギー、ガムラン、カヤグム、テーグム、尺八、箏、三味線、サントゥールやバーラマなどなど、アジアのさまざまな楽器とその使われ方を紹介します。

レコード・トーク
「マーヴェリックを聴く〜アメリカの実験作曲家たち」

アメリカの政治家、サミュエル・マーヴェリックは、自らが飼育していた牛だけには焼き印を押させなかったという。このことに端を発して「マーヴェリック」は群れに属さない「一匹狼」や「異端者」といった意味に転じたという。ハリー・パーチをはじめとする実験作曲家たちは、しばしば「マーヴェリック」とよばれ、そのパーソナルなスタイルによる固有な音楽は、20世紀のアメリカ音楽の様相をきわめて多元的なものにした。

作曲を始めた1970年代半ばより、このような作曲家たちに興味を抱き始め、池袋西武デパートの西武美術館にオープンしたアートショップ「アール・ヴィヴァン」に通い続け、その音楽コーナーの店頭にいた芦川聡の薦めで次々と実験作曲家たちのLPを買い求めていった。80年代にサンディエゴに留学してからもダウンタウンのタワーレコードに通い、さらにLPのコレクションが増えていった。今では、オンラインでかんたんにマーヴェリックの作曲家たちの音楽にアクセスできるが、レコードの刻み込まれた溝のなかに、マーヴェリックの精神をみいだしてみたい。

なお、このトークと関連して、2024年10月ころに電子書籍『マーヴェリックを聴く〜アメリカ実験作曲家たち』(字像舎)が刊行予定。

講師:藤枝守(作曲家)
時間:各回15:00-17:00
会場:sumico

M2-1

10月19日(土)「ハリー・パーチ:The World of Harry Partch」

もっともラディカルなマーヴェリックの作曲家。音楽の抽象性を嫌い、身体(コーポレアル)に根ざした音楽を志向しながら、純正調による独自の音律理論を考案。この音律を適用したキタラやダイアモンド・マリンバなどの四十種類以上の楽器を創作している。このような理論や楽器、音律の歴史などは主著『ある音楽の起源ーGenesis of a Music』にまとめられている。身体性への興味は、《Delusion of the Fury》などのシアトリカルな作品へと拡張された。

M2-2

11月16日(土)「ロバート・アシュリー: Automatic Writing」

話し声(speaking voice)の魔術師ともいえるロバート・アシュリーのマルチメディアの作品では、モノトナスな声が主役となる。1994年に東京でオペラ《インプルーブメント》が上演されたが、アシュリーをはじめとする六人の歌手たちが抑揚のない一定の音高で唱えていく。その早口で強迫的な語りの声からは、ほとんど意味を聴き取ることはできない。しかし、その言葉の背後には、壮大な寓意が満ち溢れている。《Automatic Writing》は、セクシュアルな意識、あるいは女性特有の意識や感覚がダイレクトに反映され、男と女とのピロー・トーク(寝物語)のような浮遊感が漂っている。

M2-3

12月21日(土) 「アルヴィン・ルシエ:I am sitting in a room」

物体と空間との関わりを振動という現象のなかに見いだし、「波動の詩人」としてライヴ・エレクトロニクスやサウンド・インスタレーションを数多く手掛けるルシエ。その代表作の《I am sitting in a room》は、ひじょうにコンセプチュアルな作品だが、反復されるレコーディング・プロセスによって、その部屋に内在された固有振動がルシエ自身が発した声を変質させていく。

M2-4

2025年1月25日(土)「ダニエル・レンツ:Missa Umbrarum」

1960年代、ベトナム戦争を告発するような政治色の強い作品を発表していたが、70年代以降は、テープディレイを使った独自のマルチトラック・システムを駆使して、カラフルで多層的な音響テクスチャーを特徴とした手法を展開。1991年にインターリンク・フェスティバルに「ダニエル・レンツ・グループ」として来日。合唱による《Missa Umbraum/影のミサ》は、しずかに持続する声の重なりのなかに、ワイングラスを擦る音がとけ込み、アンビエント的な世界がひろがる。 

M2-5

2月22日(土)「コンロン・ナンカロウ: Studies for Player Piano」

1930年代にスペイン市民解放戦争に参加した後、合衆国の入国を拒否されたナンカロウは、メキシコ・シティに移り住む。そして、40年代以降、リズムとテンポの可能性を目指してプレイヤーピアノのための《習作》を作り続け、その数は五十曲を越える。その微分的な時間(micro durational)の世界は、リゲティによって「現存する作曲家による最高の音楽」と絶賛され、20世紀音楽の奇跡ともいえる孤高な作風を確立。  

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3月22日(土) 「テリー・ライリー:The Harp of New Albion」

1964年に発表された《In C》は、今年で還暦を迎える。《4’33”》と並んで20世紀において最も影響力があった作品のひとつ。たんに「ミニマル・ミュージック」とカテゴライズされるスタイルの始まりとしてではなく、この音楽には、演奏者どうしがアナーキーでフラットな関係のなかでアイデアを共有するという理想の社会モデルが映し出されている。また、純正調のピアノによる《The Harp of New Albion》では、この純正調の響きが発酵のような現象を引き起こし、ライリーの即興のエネルギーが放出されている。2020年のコロナ禍の影響で日本に定住することになったライリーの近況についてもふれてみます。